過疎問題を考える10

(ひかり117号R4.7.1)

花まつりを続けたい
  仏教寺院として、仏教の開祖「おしゃかさま」のご誕生を祝う灌仏会(かんぶつえ)「花まつり」をお勤めし始めて20年を超えました。開始当初は日曜学校入校式を兼ねて、初々しい新一年生が参拝し、母親の膝に乗って甘茶を誕生仏にかけたりする光景が当たり前でした。しかし、年々新入学生も減少し、現在地元区の小学生はご門徒以外を含めてもわずか7名、今年も入学生はいません。
 入校記念に渡してきた日曜学校せいてんとお念珠もさほど減ることがない状態ですし、子どもたちもスポーツクラブなどでなかなかお参りいただけないことが続き、誰も集まらずに形骸化している行事となってきたことに危機感を持っていました。
 
 そこで現状打破を考えるわけですが、以前からお寺のヤギを家族でよく見に来られていた地元の主婦に一肌脱いでいただこうと、来坊のとき思い切って声をかけてみたのです。その方は海岸などの清掃ボランティア等を通じて子育て世代の親たちと交流されている嶋田奈津子さんで3児の母親でもあります。ご主人にもご協力いただき「ウクレレ弾き語りLIVE」を妙願寺花まつり企画として4月2日に開催することになりました。
嶋田ご夫婦によるSNSとチラシでの企画発信により、彼女の交友関係にも周知され、町内外各地から総勢40名程が集まりました。子育て世代の「子ども若ものご縁づくり」の一環としても意義深いものであり、お寺にご縁の少ない方にもなるべく簡素で理解しやすい内容での法座を心がけました。
 
 おつとめは「三帰依文」「念仏」の音楽法要を、法話は「天上天下唯我独尊」(あなたという存在はこの世でたったひとり、尊いのです)と、各々で甘茶を灌仏し焼香、そしてメインイベントの弾き語りライブ、飛び入りのフラダンスで大いに盛り上がりました。泥んこになりながらもヤギとふれあい、境内でお菓子まきのあとはコーヒー、ジュースのおやつタイムで初顔の方々とも交流でき、大盛況のうちに幕を下ろしました。
 
 少子高齢化が急速に進み、新型コロナの影響もある昨今、子どもが集まらない、法座活動に限界を感じるなど、現在そして将来の寺院活動に不安を抱きながらも、地元の子どもたち以外にも目を向け、少しの勇気とアイデアで多くの方がお寺に足を向けてくださるイベントが開催できました。そして何より、なんとか「花まつりを続けたい」 という思いで仏教寺院本来の目的が実現できたことに感謝いたします。
過疎対応支援員としても、今後教区内で寺院活動に不安を感じてらっしゃるお寺のサポートにつながるような活動をしていきたいと思います。